『鳥取環境大学紀要』第9号・第10号合併号 刊行! 明日10時より、2011年度の卒業式が挙行されます。私学としての最後の卒業式が本学11講義室でとり行われるのです。卒業するヒノッキーだけでなく、ナオキ、アシガルと共にする時間も残り数時間です。新たに船出する彼ら3人の成長をお祈り申し上げます。
もう一つ「私学最後」のニュースをお届けしましょう。『鳥取環境大学紀要』第9号・第10号合併号が刊行されました。開学
10周年記念特集号からまる2年ぶりの紀要であり、私学としての最後の紀要でもあります。論文4編と報告6編に加えて退任記念講演もあわせると160ページのボリュームとなっています。10周年記念号では、岡垣と大給がそれぞれファーストネームで論文[査読2名]を投稿しましたが、今回は論文[査読2名]と報告[査読1名]に以下の2篇が掲載されました。
[論文] 清水拓生・中島俊博・小林巧三・浅川滋男(2012) 「鳥取市里仁古民家の改修計画 -医食同源の空間をめざして-」
『鳥取環境大学紀要』第9号・第10号合併号:p.71-90
[報告] 岡垣頼和・浅川滋男(2012) 「岩窟・岩陰型仏堂と木造建築の関係についての調査ノート」
『鳥取環境大学紀要』第9号・第10号合併号:p.135-158
紀要の図書情報は以下のとおりです。
書名: 『鳥取環境大学紀要』第9号・第10号合併号
発行日: 2012年3月1日
発行者: 鳥取環境大学情報メディア・紀要専門委員会
印刷所: 勝美印刷株式会社
ISSN: 1347-9644
抜刷はまだ手元にはありませんが、1論文につき50部配布されます。月末に刊行される報告書『摩尼寺「奥の院」遺跡-発掘調査と復元研究-』とあわせて各所に送付予定ですが、入手希望の方はご連絡ください。次頁に概要を転載します。(タクヲ)
清水・中島・小林・浅川(2012:p.71-90)「鳥取市里仁古民家の改修計画 -医食同源の空間をめざして-」
要旨:日本成人の8 人に1 人が腎臓病に悩まされ、腎臓透析をうける患者は増える一方である。鳥取市里仁のSDクリニック(仮名)では、患者に透析を続けるだけでは根本的治療にならないとの判断から、「医食同源」のコンセプトのもとに、腎臓病を悪化させない給食センターを設けている。病院食の調理師には割烹料亭出身の板前を雇用し、病院食の味覚を向上させるべく日々努力を続けている。この考えをさらに発展させ、腎臓に良い薬膳料理を提供し、薬膳料理教室を開催する場として、クリニック所有者の自宅(古民家)を改修する構想が浮上している。いったん腎臓病になると、患者と家族は別の食事をとらなければならないが、食事が「美味しい薬膳料理」であるならば、患者と家族は食卓をともにし、団欒を恢復できる。以上の構想のもとに、所有者は患者と家族が同一の場で薬膳料理を楽しめる古民家レストランにむけての基礎調査と改修計画の提案を浅川研究室に委託してきた。本稿はその成果である。古民家の場合、式台や階段などに段差が多く、改修計画にあたっては、バリアフリー装置・家具の導入が最も大きな問題となる。これを復原的改修案と現状維持的改修案の2案を通して解決をめざし、外観についても、数寄屋風の意匠を取り込むことで、素朴な古民家を「料亭」のデザインに近づけるアイデアを示した。
キーワード: 腎臓病、透析患者、医食同源、薬膳料理、古民家改修、バリアフリー
岡垣・浅川(2012:p.135-158)「岩窟・岩陰型仏堂と木造建築の関係についての調査ノート」
要旨: 岩窟もしくは岩陰と複合する懸造の仏堂は山陰各地の霊山における「奥の院」にしばしば建立されている。この種の特殊な仏堂建築を、もう一つの有力な分布域である大分県の六郷満山と比較しつつ分類し、各類型と中国石窟寺院との相関性を検討した。その結果、入母屋造の礼堂を岩窟と密着させて正面に設けるB-2a型が華北の石窟寺院に最も近い一方で、岩窟内に独立した懸造堂宇を設けるB-2b型が華南の福建省に存在することをあきらかにした。現状のデータでは、日本の岩窟・岩陰型仏堂の成立は平安時代後半以降に下る可能性が高いので、南北朝~唐代に隆盛した華北の石窟寺院との間に直接的な系譜関係を認めがたいけれども、華北の石窟寺院は宋代まで存続しており、平安時代の日本に影響を与えなかったと決めつけることも危険であろう。今後はさらに多面的な角度から石窟寺院と岩窟型仏堂に係わるデータを集成し、木造建築との関係という点に焦点を絞って、類型と起源に関する考察を深めてゆきたい。
キーワード: 岩窟・岩陰型仏堂、石窟寺院、懸造、仏龕、洞窟
- 2012/03/20(火) 00:18:07|
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