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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

日田豆田

2012豆田02


 2010年末に杵築、臼杵、佐伯、豊後高田、湯平温泉、大分市中戸次など、大分県内の町並み保全地区を訪問し、翌年1月3日にレポートした。それらの町並みはすべて重要伝統的建造物群保存地区ではない。それぞれの町が独自に町並み保全を実践している。当然のことながら、重伝建地区とは風情がちがう。いつものように気取った言葉使いをするならば、オーセンティックな景観ではない、「作られた町並み」の匂いが感じられる。極端な話、伊勢の「おかげ横丁」を彷彿とさせる町並みがそこにはある。そして、正月のおかげ横丁ほどではないが、町は旅客で賑わっている。だから、オーセンティックであろうとなかろうと、旅客を呼び寄せることはできるのであって、重伝建に選定されることが「まちおこし」と同義では決してないことが分かる。

2012豆田01オンタ


 大分県内の重伝建地区は日田市豆田地区のみである。皿山の「小鹿田焼の里」から20分ばかり車に乗れば豆田の市街地に着く。駐車場の対面に小鹿田焼の専門店があり、驚いて店だなを覗き込んでべらべらしゃべっていると、「あぁぁ、皿山に行って来られたんですか!?」と内側から声がかかり、引き込まれるように店内に入って器をみた(↑)。
 良い器が揃っている。窯だしの日は戦争だと教えてくれたのは、この店の人だ。こういう小売り店が良品を買いあさっていくのである。値段も、それほど高くはない。しかし、1軒めで買うのは愚かなので、いったん外にでた。目の前には土蔵造の大きな町家がみえる。どうやら、重要文化財「草野本家」のようだ。このあたりで、塗籠の防火建築は「土蔵造」でも「塗家造」でもなく、「居蔵造」と呼ぶらしい。建築年代は江戸時代中期以降で、最も古いのが享保10年(1725年)ころの仏間、その他の部分は安永元年(1772年)の大火後、江戸後期から明治初期に建て増しされたものという。付属建物では、座敷蔵の瓦に享保16年(1731年)の銘があり、仏間に近い年代を示している。大分県最古の町家として価値は高く、2009年に県指定文化財から重要文化財に格上げされた。草野本家を含む豆田(10.7ヘクタール)が重伝建地区に選定されたのは、その5年前の2004年のことである。
 2月後半から3月末まで、日田は「雛祭り」一色に染まる。草野本家でも豪壮な雛壇の飾り付けがあり、雛祭りに係わるさまざまな道具や人形が展示されており、そのなかに用瀬の流し雛も含まれていた。

2012豆田03草野本家01
↑草野本家  ↓草野本家の雛壇
2012豆田03草野本家02雛祭り


2012豆田04


 町に出ると、重伝建の匂いはあまりしない。重伝建としては「作られた町並み」の風情が強い方であり、大分の他の町並みに近い雰囲気がする。和風の木造建築が軒を連ねてはいるのだが、2階が高く、軒の出が短いので、それらを古い建物だと感じることができない。これをネガティヴに捉える建築史家もいるだろうし、逆に都市計画の専門家は、景観の調和に尽力しているというポジティヴな評価を下すかもしれない。福岡の南部から大分にかけて居並ぶ筑後吉井(1996)、秋月(1998)、八女福島(2002)、豆田(2004)、黒木(2009)の重伝建選定に尽力した人物を知っている。その人は昨年、亡くなった。大変なお仕事であったことに敬意を表すとともに、これらの町並みに接すると、さほど伝統的建造物が集中しているわけではなく、平田のレベルでも十分だという自信が湧いてくる。
 ただ、平田とちがって、豆田は人出が多い。18日は日曜日で、旅客は平日以上であったのだろうが、その賑わいは正月の「おかげ横丁」を思いおこすほどであった。ともかく店が多い。狙いは旅客である。この殷賑が「作られた町並み」と関係しているとすれば、そのような景観形成もやはり軽視できないことになる。そんな町並みを歩きながら、本物の町家を改修したカフェ「嶋屋」(↓)に入って、抹茶だんごセットで一服した。ジャズ喫茶にするならちょうどよい面積のカフェだ。たぶん一列3室型の町家だが、畳座敷のいちばん前の部屋を土間にして通り庭と一体化している。これは悪くない改装だと思う。なにより段差がなくなって、バリアフリーが実現する。

2012豆田05


 町並みをぐるっとまわり、小鹿田焼の店に戻ってきた。結局、小鹿田焼の店はここしかなかった。器は良い。値段も高くない。お茶受けに出してくださった柚皮のシロップ漬けを食べ過ぎた。あっさりした上品な甘さに唸ってしまい、これを買いたいと申し出ると、商品ではない手作りのものだから無理だと断られた。壺を二つ買った。蓋付きの壺。佃煮とか梅干を入れておく壺だ。美味しいお茶漬けが食べたいと思うのである。お茶漬けにふさわしい茶碗は買った。それに佃煮や梅干をのせて、熱い茶をかける。そういうお茶漬けを啜りたい。小鹿田焼の器で茶漬けを啜る快楽を、これからは堪能できる。
 小雨に煙る皿山は幽玄だったが、豆田では青空がひろがり、夕陽が西に沈んでいく。久留米に戻る高速では、夕暮れの棚田と柿畑にくるまれ、幸せだった。田舎暮らしをするなら、こういうところが良いね、と切り出すと、みな相づちを打った。

2012豆田05内部
↑カフェ「嶋屋」の内部  ↓こういう建物をどう評価するか?
2012豆田06

  1. 2012/03/25(日) 01:08:59|
  2. 景観|
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