紙一重 長崎から帰っています。長崎は「小外国」だったからか、時差ぼけのような症状に苦しみ、1日半へばっておりました。撫子の第3戦(対中国)は、どういうわけか、車中のワンセグで聞いていました。赤信号で停車するときだけ画面があらわれますが、走行中はラジオ状態です。それでも十分すぎるほど撫子の不調が伝わってきました。アナウンスとスタジアムのどよめきなどで試合の内実を感じ取ることができるのです。
前半開始からしばらく放送を聞いていて、いつ先取点を取られてもおかしくないと感じていたところ、14分にあっけなく失点してしまった。「熊谷と田中がお見合いしてしまいました」とアナウンサーが嘆息し、いったい何がおこったのかは分からないのだけれども、この時間に自殺点まがいの失点をしてよい試合ではありませんからね。帰宅後、映像をみて仰天しましたね。この試合はここで事実上終わってしまった。
バックパスをした川村さんに対する非難がネット上で殺到し、炎上しているだろうと徘徊してみたのですが、思いのほか「川村は良い選手だ」という意見がある。その理由として、「川村は2015年度なでしこリーグのベストイレブン」だからという説明があり、さっそくまた検索してみました。ここで驚くべき事実を知るのであります。以下、2015年度なでしこリーグの最優秀選手です。
【プレナスなでしこリーグ1部 ベストイレブン】
GK:山下 杏也加(日テレ)
DF:岩清水 梓(日テレ)
DF:有吉 佐織(日テレ)
DF:村松 智子(日テレ)
MF:阪口 夢穂(日テレ)最優秀選手
MF:川村 優理(ベガルタ)
MF:上尾野辺 めぐみ(新潟L)敢闘賞
MF:原 菜摘子(日テレ)
MF:柴田 華絵(浦和)
FW:菅澤 優衣香(ジェフL)
FW:田中 美南(日テレ)の
どうですか、このデータをみてどう思いますか。撫子JAPANを構成する主力チームたるINAC神戸の選手が一人も含まれていない。代表主将の宮間さんも含まれていない。撫子JAPANの主力はなでしこリーグで活躍できていないのです。だから、どうすべきだったとまでは言いたくありません。上の11人で予選に臨んでいたら勝点が2~3点上積みされていたかどうか、何の保証もありません。
昨年6~7月に開催されたカナダW杯からわずか8ヶ月でこの悲惨な劣化はなぜか、監督の采配がわるいのか、というコメントも散見されます。これはおかしい。そもそも勝負事は紙一重です。紙一重のところをぎりぎりで勝者の側に這い上がっていただけのことです。恥ずかしながら私個人は、東日本大震災に係わる超自然的存在(つまり神様)のご加護のようなものを感じておりました。敵のシュートがバーやポストにあたって跳ね返るのはそうしたご加護の賜であったと思うのですが、そのバリアーが解除されてしまった。結果、紙一重から敗者側に転がり落ちてしまったのではないか。
こうした紙一重からの転落はしばしばみられることです。ブラジルW杯で3位になったオランダ代表がユーロ予選で惨敗したり、ラグビーでベスト4に進出したスコットランドが6ネーションでは大不振だとかね(エディHCのイングランドは全勝中)。昨夜の世界卓球男子準決勝でも、イングランドに楽勝だったわけでは決してないですからね。水谷、吉村ともピッチフォードに敗れる寸前までいったんだから、準決勝敗退は十分ありえた現実です。しかし、結果は紙一重の勝者側だった。
もうひとつ別の覚悟から反論があります。いま画面に映る悲惨な劣化は突然訪れたわけではありませんよ。9位に終わった一年前のアルガルベ杯(ポルトガル)での不出来について、以下のサイトに的確なコメントがあります。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10142725545
とくに以下のコメントに注目してください。
①ロンドン五輪以降、長いボールを使って前で起点を作るという戦術を佐々木監督が選択していますが、(アルガルベ杯の)デンマーク戦では特に最終ラインの裏へのロングやミドルパスを多用したためボールが治まらずポゼッションが下がってしまいました。DFからパスがつながらないのも、DFからのロングボールを想定してボランチが早めに前に上がっていく為、パスの出し先が限定されてしまうためでしょう。
②澤選手に関しては、守備での察知能力が突出して素晴らしいので、体調が戻ればボランチで起用してほしいです。宮間選手の攻撃力は素晴らしいですが、守備面はやや劣るため、ボランチではなくもうひとつ前のポジションで起用するべきでしょう。
③常に後追いのディフェンスで、セカンドボールを予測して動ける人間がこのメンバーだと誰も居ない。これまでルーズな部分を澤様に頼り切っていた弊害でしょう。若手戦力は十分に育っているので、長船・上尾野辺・中島辺りの若手中心になれば、ルーズボールの部分は 運動量でなんとかカバーできます。
④宮間も問題。試合の流れも まったく読めずに、常にきらきらクロス・きらきらスルーパス狙いで誤差がボール10個分くらい。前に蹴った瞬間、相手ボール確定ですから。ここ数試合ずっとなので、もう要らないと思うんですが、他にフリーキックを蹴れる選手が居ないのでしょうか。
こうした批評は五輪予選の惨状を予測したものとして読むことができます。アルガルベの惨敗後、澤穂希が復帰し、カナダW杯では組み合わせにも恵まれて準優勝しましたが、アルガルベの成績こそが実力であり、それではアジアですら勝てないという現実を知るべきでしょう。
- 2016/03/06(日) 14:06:57|
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