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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

秘密の御殿 -修学旅行Ⅱ

行程: 近江坂本(日吉大社、西教寺、里坊等重伝建地区)→大徳寺玉林院(修理現場)・大仙院・龍源院→仁和寺

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 カーリング大敗の余韻を引きづりながら、バスは京から近江へ向かった。坂本はいつものとおりの清々しさで我々を迎えてくれた。ただ、鶴喜蕎麦が改修中で、町家のなかに入れなかった。でも、奥のハナレでちゃんとお蕎麦を食べることができ、学生たちもご満悦でした。ところで、よく知られているように、西教寺の客殿は伏見城の遺構であることが唯一実証されている建物で、意図したわけではないのに、行程上、大徳寺の伏線としての役割を果たしてくれた。

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 昼食後、再び峠を越えて京に戻り、大徳寺の塔頭を訪ねた。まず玉林院の修理現場で、府教委の能島さんからくわしい説明をうけた。屋根の復原、廊下の復原にずいぶん苦労されていて、ちょっと無理しているな、というのが正直な印象なんだが、これは「復原」という操作そのものに由来する矛盾であって、無理をせずに「現状保存」に近い修復に徹すればあらゆる煩悩が雲散霧消する。そう思いながらも、担当の技師さんにそんな偉そうなことが言えるはずもなく、工事の成功を祈るばかりであった。

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 大徳寺では、3月まで前田家ゆかりの芳春院が特別公開されていて、どうしようかと迷ったのだが、能島さんにもアドバイスをうけて、予定通り大仙院と龍源院を参拝した。いずれも見事な枯山水の庭で知られるが、石は煩悩をあらわし、石の数が多いほうが上流で煩悩の多さをあらわしている、という。その夜、先斗町や四条河原町の居酒屋やビルの群れ、着飾って厚化粧した都会の女性をみるたびに、大仙院の石庭を思いだし、それらすべてが石のように思われてならなかった。石のない白砂の庭こそが煩悩のない「智慧の海」だとすれば、都会の対極にある鳥取はその世界に近いものではないか、とも思ってしまう。
  「鳥取なんて、なんにもないところだ」
という悪口をよく耳にするが、何もないことを満足する自分に目覚めれば、そこに幸福が生まれる。そのようなことを考えながら、都市の石庭を眺めていた。

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 大仙院の庭園と建築は日本を代表する傑作であることは疑いなく、秀吉、利休、沢庵、武蔵らとの係わりも興味を引く。ところが、塔頭の経営体制、というか、率直にいうならば、ご住職の俗化は目を覆うばかりだ。商業主義にかぶれた禅僧の姿には、ただ呆れるほかない。僧と仏寺の根本に、いまいちど立ち返ってきただきたいと切に願う。
 ところで、ここだけの話として聞いてほしいのだけれども、最後に訪れた仁和寺は今日の旅程のなかでは「おまけ」として用意していたものであった。大徳寺で時間を使いすぎた場合、カットしようと思っていたのである。また、拝観料無料というのがありがたい。ただ、「御殿」の一画はだけが有料で、
  「御殿の建築は明治・大正のものだけれども、お庭はすばらしく美しいので、希望者は拝観料を払ってみてください」
と学生に伝達しておいた。ところが、この御殿が凄かった。前にみているから、この庭の魅力は充々承知していたのだが、夕方になって、曇り空から太陽が顔を出し、庭に西陽が深い陰翳を落として、そこにこれまでみたことのない光景がひろがっているではないか。自腹を切って御殿に入場した学生・教員はわずか8名だったが、みんなニコニコしている。西陽で暖たまった広縁があまりに気持ちよいので、靴下を脱いで木肌の感触を楽しむ学生もいる。御殿の外で眺める五重塔や仁王門が、借景となってまったく別の顔をみせる姿に、庭の魔力を思い知らされた。
 集合場所の仁王門に戻ると、たむろしている学生の中で、わずか8名だけが共通の笑みを浮かべていて、
  「生まれてきてよかったな・・・」
  「500円得したような気分ですね・・・」
などとつぶやいているのだが、あまりにありがたすぎて幸せすぎて、口にだしては罰があたるような直感がはたらき、8名だけに共有できる秘密にしようとテレパシーで伝達しあい、みな沈黙の世界に戻っていった。

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ホカノからピエールへ。タスキ桟の唐門。

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  1. 2006/02/21(火) 23:44:06|
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