FC2ブログ

Lablog

鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

虹の彼方に -修学旅行Ⅲ

行程: 万福寺伽藍・松隠堂(修理現場)→平等院鳳凰堂→宇治上神社・宇治神社

20060222231418.jpg


 昨夜はお酒を控えたので、体調は上向き加減で、天候も晴朗。まず黄檗宗の総本山、万福寺を訪れた。黄檗山万福寺は福建省にある臨済宗の正統たる禅院であり、隠元和尚はその住持を務めていたが、3年間という期限付きで長崎の崇福寺に招聘された。まもなく上京し、江戸にも上って、帰国しようとしたところ、幕府から引き留められて宇治に境内地を賜り、そこに建設した寺もまた黄檗山万福寺と名付けた。だから、中国と日本に同じ僧を住持とする同名の寺が存在するのである。
 黄檗はすでに地名にもなっていて、京大の合宿所とグラウンドがあるところ。学生時代、F.C.ゼクストンというチームに属していたわたしは、毎秋2泊3日で合宿に来るのを楽しみにしていた。たしか、一人一泊800円だったと記憶する。黄檗宗万福寺の伽藍が、もうひとつ懐かしい匂いがするのは、大学院時代に上海に留学しており、近隣の江蘇・浙江省でたくさんの禅寺に参拝した経験による。禅寺の大半はけばけばしい明・清時代の様式であったが、隠元和尚が黄檗宗を伝えたのが明末清初だから、江南禅寺の芳香がたちこめているのは当然のことである。だから、江南で過ごした青春の日々を思いおこすわけだ。しかし、建築の様式や技術を完全に直写できるはずはなく、万福寺は江南禅寺そのものではない。まず彩色が大人しい。そして、木作の細部が繊細だ。建設工事には福建省から中国人の工匠を呼び寄せたというが、建具などの「小木作」は日本人の工匠が受け持ったはずだ。中国の工匠がどうあがいてもなしえない繊細な細部を万福寺は備えている。これは日本の工匠にしかできない技だとわたしは思う。

20060222222916.jpg

20060222222936.jpg


 万福寺では、修理中の松隠堂を見学させていただいた。松隠堂は隠元和尚の隠居間を起源とするが、現在は開山堂に附属する客殿である。今日の解説は、府教委の浅井さん。昨日の大徳寺玉林院は檜皮葺を桟瓦葺に改めたものを旧状に復原しようとして苦労されていたが、こちらはこけら葺を桟瓦葺に改めたものを元に戻そうとしている。似たような屋根修理であるにも拘わらず、松隠堂に大きな問題はない。こけら葺が下地となって瓦に覆われていたからで、小屋組の負荷を考えても、こういう場合の復原はそう悪くないかもしれない。ただし、桟瓦が大量の廃棄物になる点が気になるところだが。

20060222222925.jpg


 松隠堂の平面は六間取りの方丈タイプで、臨済系の方丈とよく似ているが、室中に板張りがなく、前後の間仕切りを後側にずらすところに特徴がある。これは、ホカノが卒論として取り組んだ黄檗宗清源寺跡の指図とよく似ている。ホカノにとって、玉林院と松隠堂の修理現場は、これ以上ない参照資料となったのではないか。

 万福寺から平等院へ移動した。良いものはよい。凄いものはすごい。平等院の伽藍と庭園をみれば、だれだってそう思う。平安貴族があこがれた極楽の世界である。貴族や庶民のような世俗の人々を「救った」のは阿弥陀浄土の思想であった。極楽など、どこにも存在するはずはないのに、死ねば極楽に行けると教えられ、それを信じて南無阿弥陀仏を念じ続ける。これは絶対的他者を信望するキリスト教とも共通する他界観念だが、仏教の本質は「空」であって、死んで極楽浄土に行けるなどと仏陀が唱えたはずはなかろう。
 生も死もない。みな空だから、恐れる必要などないのだよ、と般若心経は説く。そういう世界観をあらわしたのが禅の石庭、とりわけ白砂の庭であり、池の上に楼閣を浮かべて極楽だという浄土信仰の庭とは対極をなすものである。平等院の伽藍と庭園は虹のようなものだ。実体はないのに七色に輝く幻想の極楽浄土。実体はないのである。

20060222223307.jpg

20060222225039.jpg



 拝観料を気にして、宇治上神社は自由参観とした。しかし、行ってみれば拝観無料(行ったのは7名だけだが)。日本最古の神社本殿にも恐れ入るが、寝殿造の面影を残す拝殿は気品のある名建築だ。

20060222223256.jpg


20060222223247.jpg


以下、チョン先生から送られてきた記念写真です。

20060227213655.jpg

20060227213712.jpg

  1. 2006/02/22(水) 21:33:30|
  2. 建築|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<茶室のパンフ、再び | ホーム | 秘密の御殿 -修学旅行Ⅱ>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://asalab.blog11.fc2.com/tb.php/323-9331089a

asa

12 | 2020/01 | 02
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Archives

Category

Links

Search