今年の前期講義は、人間形成科目「鳥取学」のコーディネートをする以外では、3・4年生対象の展開科目「地域生活文化論」を担当するだけである(1~4年の演習「プロジェクト研究」は別に4コマにある)。「地域生活文化論」は、これまで環境デザイン学科の4年生に配当する展開科目で、環境政策学科の3・4年生も受講可能な科目としていたが、今年からデザイン学科の3年生も受講対象に含めることにした。このため、昨年まで前期におこなっていたデザイン学科3・4年対象の「建築の保存と修復」を後期にまわした。
「地域生活文化論」は、東方アジアの民族建築をテーマとする講義であり、まずはこの地域の文明的中核を占める中国諸民族の住居について述べ、ついで、中華の四方にあたるロシア極東、モンゴル、チベット、東南アジア、オセアニアなどの住まいを見回しながら、最終的には「日本民家の座標」をアジア的視点から定めようとするものである。授業構成は以下に示すとおり。
第1講:オリエンテーション -住居の始原
第2講:民族建築の方法と射程/中国とは何か
第3講:漢族建築の文法 -「四合院」の成立と持続
第4講:文明と生態のはざまで -江南漢族の水郷民居を中心に
第5講:カマド神と住空間の象徴論
第6講:園林都市 蘇州 -世界文化遺産評定2000
第7講:稲作と高床の民 -西南中国から東南アジアへ
第8講:狩人の住まい -アムール流域のツングース
第9講:オンドルと丸屋根の家 -中国黒龍江省の朝鮮族
第10講:雲南に流れこんだ北方文化 -遊牧民の南下と定住
第11講:舟に住む -東方アジアの水上居民
第12講:海に生きる -ミクロネシアの分棟型住居
第13講:離島の建築 -日本列島の周縁
第14講:日本民家の座標(最終講義)
環境デザイン学科の1期生が4年になった一昨年の後期、この講義はスタートした。そのとき、受講対象はデザイン学科4年と政策学科3・4年で、履修登録者は45名前後、毎回の出席者は20名前後にすぎなかった。4年の後期では、すでに単位を揃えている学生が多く、よほど興味がない限り、履修登録をしないだろうと判断し、昨年、この授業を前期に移した。反応は敏感で、履修登録者は90名を越え、常時の出席者は60~70名に増えた。今年は、受講枠をさらにひろげ、デザイン学科の3年生も対象に含めたところ、履修登録者は160名にまで増え、出席者は130名前後を数える。おかげで、昨年までの講義室では学生が納まりきらなくなり、200名以上収容できる大講義室に教室が変わった。
毎年、入学生は減っている。少子化の大波は環境大学のような田舎の私学を直撃する。だから、繰り返すけれども、学生総数は漸減しているのである。しかし、「地域生活文化論」の受講者は倍増し続けている。また、先週のブログで述べたように、プロジェクト研究1&3「古民家のリサイクル」もまた学生で溢れている。2期生の卒業でゼミ生は減ったけれども、それでも11名の学生がいて、とにもかくにも、自分が接している学生の絶対数は爆発的に増加しているのである。
だから、少子化の実感が湧かない。
これから第3講義の準備をする。「四合院」は、漢族にとって宇宙の凝縮であり、都市、国家の空間と相似関係をもつという点が主題をなす講義である。
- 2006/04/24(月) 19:28:45|
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