fc2ブログ

Lablog

鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

住吉のジャンゴ

EI6sh0102.jpg


 あまりに天気がよいので、「どこかに出かけよう」ということになって、長女のいる住吉に向かった。閉門すれすれの夕暮れどき、住吉大社にすべり込み、久しぶりに4棟の御神殿に参拝した。もう15年くらい前になるだろうか、本殿の屋根替えがおこなわれていて、奈文研建造物のメンバーで内部を参観させていただいたことがある。そのとき、束とサスだけで構成される小屋組の力強さと神聖さに胸を打たれた。良い素材を使って、しっかりした加工をすれば、素朴な構造が空間に圧倒的な超越性をもたらす。素朴な構造が表現する美と聖性。復元建物のめざすべき目標は、ここにあるのかもしれない。構造が美しさとなってあらわれる素朴な古代建築を復元してみたいものだ。

20060503224423.jpg


 住吉大社から長女の住むアパートまでは数百メートルしか離れていない。娘は、突然両親がたずねて来るというので、食事もせずに部屋の片づけをしていたらしく、起きてから何も食べていないという。それでは、夕食にということで、近くの「プチ飲屋街」に出かけた。ゴールデンウィークの初日だからだろうか、暖簾を下げている店が少なかったのだが、スウィング・バーと称する店を発見した。いつもギターの音が聞こえてくるけど、おじさんばっかりいるから入ったことない、と娘はいう。娘は、わたしがジャズとギターを愛する人物であることをよく知っているから、その店を教えてくれたのである。その店の名前は、
  「ジャンゴ」
であった。ジャンゴとは、いうまでもなく、ジャンゴ・ラインハルト Django Reinhardt のことである。ジャンゴは、1910年、ベルギーのキャラバンで生まれたジプシーの音楽家で、少年時代から一家とともに各地を放浪して演奏を続け、弦楽器の腕を磨いた。10代の終わりに、キャラバンが火災に遭い、左半身に重傷を負ったため、左手の薬指と小指が硬直したまま動かなくなったのだが、3本指で演奏する独自の奏法を編み出し、ギターの演奏を続けた。戦前にフランスで絶大な人気を誇ったミュゼット(アコーディオンを中心とするバンド音楽)から出発しつつ、アメリカのスウィング系ジャズ・ミュージシャンとも交流が深く、バップ・ギターの祖チャーリー・クリスチャンにさえ影響を与えた伝説のギタリストである。ギターマニアのわたしが、ジャンゴに興味を示さないはずはなく、学生時代にはステファン・グラッペリ(バイオリン)との共作をはじめ、何枚かのレコードを買った。

20060503224357.jpg

 ネットで検索してみると、「ジャンゴ」の名をもつ店はとても多い。それらの大半は、スウィングジャズ系のショットバーのようである。ところが、ここ大阪市住吉の「ジャンゴ」はお好み焼き屋さんであった。正確に、店の看板を伝達するならば、
  「お好み焼き いっぴん 焼酎 すぃんぐばぁ」
と書いてある。
 店に入ると、常連客がたむろしていた。かれらは、カウンターに陣取って、のんびりのんびりお酒を飲んでいる。壁には3本のフルアコースティック・ギターが吊してあり、入口側の土間にはウッドベースを立てかけている。どうやら、常連客とマスターは、バンドを組んでいるメンバーのようで、プロかセミプロかアマか分からないが、明日ライブを控えているようであった。少し練習でもしてくれないものか、そうなればギターに触らせてもらえるかもしれない、と期待していたのだが、近所からの苦情を気にして、マスターは練習を許さなかった。
 店の雰囲気と常連客の行動をみていて、いつのまにか憂歌団に想いを馳せていた。憂歌団は、その名のとおり、ブルースバンドだが、内田勘太郎のギターにはあきらかにスウィング系ジャズの影響を感じ取れる。木村秀勝のボーカルは、ブルースと森進一がチャンプルーしていて、あんなに大阪的な音楽はこの世に存在しないであろう。大阪にはジャンゴのような音楽好きのたまり場となる酒場が数限りなくあって、それが憂歌団のようなバンドを生む温床になっているのだ。
 ジャンゴのお好み焼きと一品とイカスミ焼きそばは、抜群の味がした。

20060503224412.jpg

↑長女のアパートからみた住吉大社の杜


20060503224443.jpg

↑拝殿を通してみた第2本宮。↓千鳥破風・軒唐破風・檜皮葺きの拝殿
20060503224457.jpg

  1. 2006/05/03(水) 22:22:59|
  2. 食文化|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<オンサンマヤサトバン! | ホーム | 田和山遺跡大型掘立柱建物の公開>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://asalab.blog11.fc2.com/tb.php/407-91461315

本家魯班13世

08 | 2023/09 | 10
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Archives

Category

Links

Search