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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

縄文の森の手羽先

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 午前10時頃、家の外にでると、曇空からポツリと雨粒が落ちてきた。急ぎ、携帯のネットで天気予報を確認したところ、今日は「曇後雨」で降水確率は12-18時:60%、18-24時:60%となっている。昨日の予報では「曇」で40%→40%だったのに、降水確率が20%上がり、実際に午前中から小雨が降り始めた。ただちにチャックに電話し、雨の場合は、バーベQの会場を実験棟脇の吹きさらしの屋根の下に変更することで合意した。
 午後1時半から妻木晩田事務所の新しいスタッフが挨拶にきて、打ち合わせをした。基本設計の2年目で正念場を迎えるということを何度かブログでも書いてきたが、いったいぜんたい、この年度の重要性を何人が自覚しているのか。ここではっきり書いておく。
 わたしがうるさく言う以外にない。これしか妻木晩田の整備を成功に導く途はない、と勝手に決めた。悪いけど、すでに決心を固めたので、関係者ご一同、わたしのブログには随時ご注意いただきたい。

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 午後3時から31講義室で、某助手の博士学位請求論文講演会。とは言っても、これは浅川研究室の3・4年ゼミ(プロジェクト研究5&7)を学内外に公開したものである。ゼミ生12名以外に、学内教員3名、学外者11名の参加があった。学位論文は南インド、スリランカの植民地都市と都市住居に関する研究で、さすが20倍以上の倍率を勝ち抜いて本学助手のポストに着任し、その4ヶ月後、公約どおり学位を取得しただけのことはある。建築学会全体をみわたしても、同年代ではぬきんでた能力をもつ若手研究者の一人であるのは間違いない。しかし、誉めてばかりもいられない。
 会場では、来客のほぼ全員にコメントを求めた。みな紳士的で穏やかなコメントであった。厳しかったのは、わたし一人。
   「時間軸が消えている」
 何度も南アジアに赴いて住宅を調査しているのに、画面にあらわれるのは住宅の「間取り」ばかり。要するに、平面のタイポロジーをやっているだけか、という印象がぬぐえない。この分析枠では、おおきな飛躍は望めないだろう。フィールドに出て、実在の居住建築物を体験しつつ調査しているのだから、その対象を如何に総合的に理解できるかが鍵を握る。そのためには構造・構法・細部・装飾など住居の全体に目を配らなければならない。そうすることによって、建築物の年代観も(相対的ではるかもしれないけれど)みえてくるだろう。こうして時間軸を視野に納めながら、住宅と社会的な変動との関係をみきわめていただきたいものである。
 ついでにもう一言。講演を聴きにきてくださっているお客様は色とりどり。本学の学生・教員もいれば、建築家、考古学者、民族学専攻の大学院生などバラエティに富んでいる。こういう方々に、自分の専門領域をできるだけ分かりやすく、短い時間で講述する工夫が欲しかった。ここまで書くと、おまえの若い頃はどうだったんだ?という皮肉を頂戴しそうだから、釈明しておくと、もちろん発表が上手かったわけではない。指導教官からは、いつもこう叱られていた。
  「アサガワッ、『人みて法説け』、言うやろ!」

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 某助手が発表しているあいだ、わたしはブラインドの外に垣間みえる雨模様を気にしていた。雨は上がりつつあり、ヤフーの予報も18-24時の降水確率が40%に下がっていた。懇親会は予定どおり、裏山の「盃彩亭」(廃材でつくる茶室)の周辺でおこなうことになった。はじめて茶室を訪問するお客様は、まず裏山の自然に驚かされる。大学のキャンパスとはまったく異なる世界がそこに展開しているからだ。考古学者が参加していたので、
  「弥生の植生はこういう感じなんだろ、照葉樹が群生している森・・・?」
と訊いたところ、
  「いや、縄文後期がこうなんです」
と鳥取大学の某講師は言う。
  「えっ、そうなん。落葉広葉樹と照葉樹が混ざっているイメージ??」
  「そうです。その混合林が縄文後期で、弥生になると、山の開発が進んで、杉や赤松などの2次林がにょきにょき生まれてくる・・・」

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 それから深夜までバーベQは続いた。縄文後期の森に囲まれた茶室周辺の空間は、夕暮れ時も美しいが、陽が落ちて炉の火に照らされる姿もまた幻想的だ。
 肉も魚も野菜もお酒も、たくさん準備してあった。茶室周辺の森は、食材の味をも変質させる。この美味しさを、もっと大勢の方々と共有したい、と思うのだが、裏方で宴会を仕切ったチャックは言う。
  「センセイ、人数が多すぎますよ・・・」
 宴会を支える裏方は大変だったのだ。チャックや某大学院生をはじめとする学生諸君には、ここで改めて感謝の気持ちをあらわしたい。
 ちなみに、チャックが自作のカマドで焼く手羽先の味は、昨年と同様、最高だった。骨付き肉の旨さを堪能できる。

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茶室前の照葉樹です。
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  1. 2006/05/26(金) 23:59:57|
  2. 講演・研究会|
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