学生諸君にも、木推協のみなさんにも、わたしが加藤家の修復で採用しようとしている「トチ葺き鉄板被覆」の屋根について、どうもしっかりイメージしていただけていないようだ。関係者には何度か漏らしてきたのだが、それは神社に多用される「トチ葺き銅板被覆」屋根の応用である。
そこで、今日から折りをみて、この手の屋根をもつ社寺を見学してまわることにした。今日は、うちの大番頭=ホカノとともに、河原町の樋口神社を訪問した。ちょうど、銅板葺き替えの真っ最中であった。職人さんは、若いけれども気さくな方で、「どうぞ上がってください」とのことで、足場の上から写真を撮り、質問に答えていただいた。今日は時間がないので、写真の解説に徹したい。

↑拝殿の軒先では、古いトチ葺き屋根の上にベニヤ板を貼っり、防水シートを敷いてから、横長の銅板を段々に葺き重ねていた。本殿と拝殿を覆う足場(素屋根)の経費は80万円。とくに時間的な制限はないという。

↑防水シートと銅板の関係。勾配のきつい部分では、ごく一般的なカラールーフ(上の深緑)を防水シートとするが、軒に近くて勾配の緩い部分には上質のゴムアスという防水シートを用いている。今回使用したゴムアス(淡い緑灰色)は1枚1万円。安いものでは、1枚2000~3000円のものもある。防水シートの上に横桟を打ち付け、銅板を葺く。

↑拝殿の軒付。トチ葺きの木口が部分的にみえる。完全に隠さないことが肝心。軒付を優雅にみせる工夫だ。

↑本殿向拝の木鼻と繋虹梁。絵様は幕末~明治初期の様式を示している。本殿と拝殿は同年代の建立と思われる。

↑本殿は二重軒付としていた。拝殿よりも格上。民家にも応用すべきかどうか?
大学に戻ると、県の松本さんから三仏寺納経堂と聖神社本殿の画像が送られてきていた。三仏寺納経堂は奈文研古環境研究室の年輪年代測定により、平安時代の建物であることが判明している。

↑三仏寺納経堂トチ葺き屋根修理前 ↓同修理後

↓三仏寺納経堂トチ葺き屋根修理前 側面

↓聖神社 蛇腹を用いた高級のトチ葺き。こんど視察に行きましょうか。
- 2006/08/25(金) 21:47:54|
- 建築|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0