昨年から「平成の大修理」に取り組んでいる国史跡・池田家墓所。主に、墓を取り囲む玉石垣の修復が問題になっている。大多数の玉石垣が南田石(のうだいし;福部町南田産の凝灰角礫岩)であり、加工は容易だが脆く、風雨にさらされ劣化していく。また、玉石垣の構造自体が弱いので、地震等により倒壊をくりかえしている。一部の玉石垣では、倒壊後に鉄筋等によって修復しているが、補強箇所が石材の破損を誘発している。今後の修理にあたって、同じ轍を踏まないように石材の強度を知る必要がある。強度を知るためには、科学的な破壊試験が必要であり、圧縮、引張、曲げなどの特性を知るために、それぞれ異なる方法で試験をおこなうことになる。
どのような試験になるかは未定だが、少なくとも南田石の新材、古材と花崗岩の試験をおこなう必要があるだろう。事前の準備として、墓所地に散在している一部の古石材を大学に持ち込むべきと判断した。これについては、池田家墓所保存会の了承を得ており、管理人の沖さんに立ち会っていただいた。昨日(7月12日)、大学側からは岡野・木村のほか藤井兄(北原研究室)が墓所を訪れ、沖さんのアドバイスにより、米子(3代藩主長女)墓の背面(地図上の赤丸)に集積している石材の中から2材を持ち出すことになった。ここに集積された石材は、墓所内に散乱・放置されていたものばかりである。引き取った石材は、ともに150mm角、長さ約500mmである。コンクリートの強度試験に用いるテストピースの規格の倍の長さを選んだ。無論、材を取り出す際に、写真を撮影している。元の状態に戻せるようにするためである。
鳥取環境大学に持ち帰り、北原教授(建築構造)に石材をお見せしながら意見をうかがった。試験の実施は可能とのことだが、
①石本来が持つ強度を把握し、試験可能な供試体として整える必要がある。
②特に、石材の試験機に接する面を平らにしなくてはならない。
③圧縮よりは強度の低い曲げ試験から始めたい。
④石材だけでなく、補強を施した材全体についても試験をすれば有意義なデータを得られるだろう。
⑤コンクリートの試験に用いる方法から模索していただける。
とのことだが、トンネルや岩盤などの土木の観点からも専門家から意見を聞くのも良いのではないか、とのアドバイスをいただいた。北原教授のご意見を踏まえた上で、浅川教授の意見を伺い、これから試験方法を詰めていくこととなる。[岡野]

- 2005/07/13(水) 00:24:12|
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