
いま田園町宿舎の裏庭では、つくつくぼうしが
「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」
と鳴いている。秋の訪れを感じさせる夕暮れ。午前中、国道9号線の海岸沿いに車を走らせ、大好きな夏の日本海に目を奪われていた。しかし、もう夏も終わる。ひょっとしたら、今日が夏の日本海も見納めかもしれない、そう思って白兎海岸近くのコンビニに停車し、
船小屋を含む日本海の写真を撮った。
倉吉は暑かった。今日のわたしの仕事は、学生たちが取った調書(データベースの元資料)の確認。80戸あまりの世帯を次から次へ尋ねてはインタビューを繰り返した。話のわかる家主さんの場合、2階に上げてくださる。2階に上がれば、
仮面の裏側に隠された町家本来の姿に接することができるのである。
いくつかのヒット商品を紹介すると、まずはカットサロン。間口の狭い看板建築だが、2階には大正時代の数寄屋意匠がふんだんに隠されていた。マダムもこの建築をいたくお気にいり。つぎはスナック。幕末の2棟の町家にはさまれたスナックは、よくみると、両側の町家と屋根の高さがほぼ変わらない。いわゆる中2階式であり、両隣と同時期の建築と思われる。内側には古式の小屋組が残っている。第3はスポーツ用品店。2階にあがると、水平筋交をともなう豪快な洋小屋(木造トラス)の小屋組に圧倒される。聞けば、かつては山陰合同銀行の支社であったという。
このように、2階に上がらせていただければ、伝統的な意匠と構造を堪能でき、それによって建物の年代も推量できる。ただ、「2階は勘弁して」というお宅のほうが多くて困った。
仕方のないことである。自分が逆の立場なら、やはり自宅の内部公開は控えるであろう。
ともかくこの作業にへばった。なんとか半分(南側)をこなしたところで、実測を終えた「北から来たの」さんが合流してきたので、二人でこっそりお店に入り、オレンジのジェラードを食べた(数あるジェラードのなかでオレンジが一番人気、次がミルク)。わたしはチャイまで飲んだ。そうこうしていると、O君2号も店先にあらわれたので、オレンジのジェラードをご馳走してしまった。
田園町の宿舎に戻り、つくつくぼうしの鳴き声を聞きながら、真っ先にシャワーを浴びた。とんでもない量の汗をかいたからである。そのあと、遅れて帰ってきた学生たちと合流し、中華料理の「
昇龍」でかるく打ち上げをした。生ビールがうまい。
夏の終わりは、まだ蒸し暑かった。

↑↓カットサロン。大正の建築。


↑↓スナック。幕末の建築。


↑↓旧山陰合同銀行
- 2006/08/27(日) 23:56:45|
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