
いま仙台駅の「ずんだ
茶寮」で、仙台名物のずんだ餅を食べている。枝豆をつぶした緑色のあんこをたっぷりまぶした団子が3つに、暖かい黒豆茶と潮吹き昆布がついて525円。
さきほどまで、山田上ノ台遺跡を訪れていた。7月のオープン・セレモニーに出席する予定だったのだが、寝台列車も飛行機も満席でドタキャンした代わりの訪問である。今春の
ゴールデン・ウィークに御所野縄文博物館の高田館長と訪問した際には、土屋根の復元竪穴住居に草は生えていなかったが、いまはご覧のとおり、イネ科植物(イヌビエが多い)が繁茂している。景観の質はますます向上してきた。

ところが、ここだけの話なのだけれども、じつは梅雨になって、大きな問題が発生していた。雨漏りである。山田上ノ台の復元住居については、これまでの失敗と成功の経験を最大限活かしてきたから、竣工後こんなに早く雨漏りするはずはない。わたしたちの考えた防水処理が効果のないはずはなく、正直、現地からの報告に耳を疑った。土屋根の防水について、わたしは
田和山の方法で十分だと思っていたのだが、今回ペアを組んだ施工業者=TM社は、
デュポンの防水シートを屋根下地(樹皮葺き)全面にかぶせることを主張した。通気性と防水性を兼ね備えるハイテク・シートで、触感はパンストのように薄っぺらで滑らかだが、強度も尋常ではないという。値段は高いが、業者がそこまで自信をもっているのだから、任せようと決めた。ただ、
御所野大型住居の反省から、防水シートの上にソダ木を並べることにわたしは反対だった。TM社は、たしか土厚を確保するためにそれが必要だと判断したように記憶している。わたしは、ソダ木が防水シートを破ってしまう危険性を恐れていたのである。

↑棟。テグスはカラス除け。 ↓天窓

しかし、事情は異なっていた。仙台市教育委員会からの報告によると、防水シートを敷きつめる際、防水シートに穴をあけて紐で樹皮下の木材と結びつけていたというのだ。
そんなバナナ・・・防水シートに穴をあけたら、そこから雨が漏るのはあたりまえのことだ。しかも、その穴は樹皮下地をも貫いている。仮にシートに穴をあけるとすれば、その穴を覆うように重ね葺きしなければならない(葺き足の下面のみ穴をあける)。これは防水施工の常識である。それができていないのだから、施工業者の責任は動かない。
わたしは、さっそくTM社の担当者に電話し、防水処理のやり直しを命じた。オープンセレモニーに間に合うよう、大至急の手当てが必要だった。しばらくして、紐で穴があいた部分にアスファルト・ルーフィングを施し、その上から屋根全体を再びデュポンのシートで覆うことになったという連絡があった。結局、デュポンのシートは新旧2枚を重ねて葺いたことになる。
結果は上々であった。ただし、煙抜きの天窓周辺から雨水が吹き込む場合があるという。常時天窓を塞ぐわけにはいかないが、大雨のときには、天窓にシートを被せるなどの応急措置が今後必要となるだろう。

↑縄文畑(エゴマ)から復原住居をみる ↓相談カウンターを通して展示室と事務室がつながっている。

山田上ノ台は活気があった。朝から老人の団体客が訪問し、ガイドに連れられて遺跡と博物館をみてまわっていた。とくにガイダンス施設2階の休憩所からの眺望は抜群で、ご老人たちは席をまったく動こうとしない。春には何もなかったガイダンス施設の屋根も、屋上緑化が進んでいて、眺望景観をいっそう引き立てている。一方、小学生たちは「勾玉作り」の体験学習に没頭していた。博物館の職員がパワーポイントで勾玉の作り方を説明し、黄色いベストを身につけたボランティアたちが手取り足取り指導している。
公園内では、発掘調査もはじまっていた。ユンボで客土を剥いだところだが、すでに2ヶ所で住居跡の炉石が顔をみせている。調査トレンチの近くには縄文畑の栽培植物がすくすくと育っていた。イヌビエ、アワ、キビ、ヒョウタン、エゴマ、ソバ等々。太田所長によれば、エゴマで作った団子が大好評だったという。
オープンから1ヶ月あまり。来訪者の数は、すでに1万人を超えている。ガイダンス施設のデザインにもう一工夫ほしいところだが、遺跡公園としての質は高い。昨年、一昨年と連続して訪れた英国の遺跡整備とくらべても、遜色はないレベルに達しているとわたしは思った。御所野や山田上ノ台は、英国などヨーロッパの先史遺跡公園と姉妹関係を結んで交流すればいい。三内丸山や吉野ヶ里では話にならないが、御所野や山田上ノ台なら、きっとヨーロッパの考古学者も喜んでくれるだろう。

↑勾玉作り

↑竪穴住居内部ジオラマの見学風景 ↓にぎわう2階の眺望休憩スペース
- 2006/08/29(火) 13:19:51|
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