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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

春日造の神社本殿

 盆明けから猛烈にスパートして動いてきたが、中日の休日を奈良ですごしている。山陰から東北をずっと列車でまわってきて、昨夕、京都駅に着いた時には、やはり「熱い」と思った。山陰も東北も、決して暑くないことはなかったが、やはり本場の熱さは違う。
 京都まで、たぶん15時間ばかり列車に乗った。そのあいだの楽しみは、鞄の片隅にしのばせておいたマイケル・クライトンの『恐怖の存在』なのだけれども、まだ上巻の200ページばかりしか読み進んでいない。おもしろい小説であるのはたしかだが、体が休息を要求しているので、読書は睡魔の誘発剤となってしまうのだ。
 ともかく、ジョージ・モートンの動きがおかしい。環境問題に関心を抱き、環境保護団体NERFに巨額の寄付をし続けてきた大富豪が、その寄付を中止するよう顧問弁護士のピーター・エヴァンズに指示し、それを実行してしまった。どうやら「二酸化炭素による地球温暖化」に疑問を抱きはじめたようで、世界中のあちこちを一人で動きまわっている。じつは、わたしも今晩、ちょっと地下に潜って活動しようと思っている。床下どころか、地下に潜らざるをえなくなった理由が何なのか。もちろん今は言えない。いずれあきらかになるだろう。

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 昼間は大極殿事務所から奈文研をまわって昨年度の報告書(池田家墓所知の財産・倉吉の町家と町並み)を配り、最後に西大寺フォトでベトナム調査用のフィルムを買いそろえた(鳥取ではポジ・フィルムが入手しにくい)。そろそろベトナム調査の準備を進めなければならないのである。帰りに、歌姫町の添御県坐神社(そうのみあがたにいますじんじゃ)に立ち寄った。ひょっとしたら、とち葺きこけら葺きの建物が境内にあるのではないか。そういう淡い期待は、あっさり裏切られた。初詣では瓦葺き拝殿の前までしか行かないので、今日は小高い丘陵を上り、本殿を側面と背面からはじめて眺めた。

  檜皮葺きの春日造。

 そりゃ、そうだろう。ここは奈良で、添御縣坐神社は式内社だ。大和における神社本殿の正統性をよく示している。しかも、小振りの春日造であるところが憎たらしい。御輿を起源とする春日造本殿成立の仮説を訴求するかのような姿にみとれた。個人的な見解をのべるならば、日本でもっとも広域的に分布する本殿様式、すなわち流造と春日造はいずれも古代住宅の平面に由来するものであろう。身舎(もや)の妻側に一面庇をつけたものが春日造、平側に一面庇をつけたものが流造であり、その構造を縮小し、土台上に建てて可動の神殿としたのではないか。

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 くりかえすけれども、屋根は檜皮葺きであった。軒付は厚い。棟には瓦葺の箱棟をのせて、獅子口で両端をふさぐ。様式はとても正統的で古めかしく、あるいは中世の建物かとも思われたが、そうであるならば重要文化財のはずだから、近世に下るのは間違いない。帰宅して調べたところ、宝暦5年(1755)の造替で、明治25年と大正4年にも修理されているとのこと。
 春日大社本殿よりも古く、円成寺春日堂・白山堂ほど仏寺化していない典型的な小社であり、学生の教育には最適の春日造神社本殿であった。講義用パワーポイントに加えようと思っている。

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  1. 2006/08/30(水) 18:27:24|
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