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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

講義接近-「建築の保存と修復」をめぐって

 今日は、朝から晩までガイダンス。1~4年生と大学院生の5コマ分すべてがガイダンスだ。わたしは教務委員と大学院担当委員の両方を務めているので、すべてのガイダンスに顔を出さなければならない。・・・のだが、午後からの2コマ分はもう一人の教務委員である某助教授にお任せすることにした。なにより朝一番の大学院ガイダンスがしんどかった。早起きして、今日もビアンキを漕いできたのだが、昼になって疲れが滲んでくる。眠くてしかたない。

 ガイダンスが終われば、授業も始まる。
 授業は明後日から。わたしの担当する展開科目「建築の保存と修復」(3年以上)は木曜3限から。それに続く4・5限はプロジェクト研究2&4(1・2年)だ。
 「建築の保存と修復」という科目名の講義を開講しているのは、日本全国津々浦々、多数の建築系学科のなかで、ひょっとしたら本学だけかもしれない。わたしはこの講義の教科書に、クヌット・アイナー・ラールセン(Knut Einar Larsen)の著書 ARCHITECTURAL PRESERVATION in JAPAN(『日本建築の保存修復』イコモス木造委員会、1994)を使っている。なぜ、こういう英語のテキストを使うのかと言えば、以下の2点を評価したからである。

  1)日本建築の保存修復に関する概説書はこれ1冊しかない。(すなわち、日本語で書かれた日本建築保存修復の教科書・概説書は存在しない)
  2)本書は、西欧の保存修復理論と対照させながら、日本における木造建築の保存修復の特異性を相対化させている。

 おまけに、本学は開学以来「英語」に大きなウェイトをおく教育理念を育んできた。そのため、専門教科の展開科目に英語のテキストを取り入れてみたのである。
 昨年までは、3年の前期にこの講義をおこなっていた。受講者は、全員パソコンと英語の辞書を持参する。まず、わたしが自ら和訳要約したレジメに即して60~65分講義し、講義の最後に学籍番号の下1桁(もしくは下2桁)ごとの課題を示す。その課題というのは、テキストのパラグラフ15行前後の和訳である。本文は専門的で難解だが、わたしのレジメに要約があるのだから、学生はその要約を頼りに和訳すればよい。和訳した文章をワードに打ち込み、完成したら本講義専用のアドレス(hozonshufuk@・・・・)に送信する。授業中に和訳できた学生は授業中に送信すればいいし、できなかった学生は、授業後できるだけ早く指定アドレスに送信しなければならない。わたしは、その着信履歴(早い方がよい)と和訳内容をチェックし、毎回の訳文を採点し、その総合点で評点をつける。こういう、やや変わった授業を3年間続けた。
 学生にとっては、きつい授業だったようだ。タクオのように英語の好きな学生は喜んでいたが、年々そういう学生は減っていくばかり。結果、3年目に受講者が減った。2期生までは80%以上の学生が履修していたのに、3期生の履修は60%程度になってしまった。どうも、やる気を感じない。「保存修復」自体に興味がないのかもしれないが、英語がイヤだという心理が働いているように思えてならない。
 だから、今年度は後期に授業を移し、英文の和訳は部分的に残すけれども、大半の授業では「理解度チェック」方式に切り替えてみようと思うのだが、両者のパーセンテージをどれぐらいにすべきかで、いま悩んでいる。
 オリエンテーションで様子をみるしかないだろう。どれぐらいの数の受講者があり(3年後期なのでやや少ないはずだ)、その受講者がどういうタイプの学生かで授業の方針も変わってくる。

 ちなみに、著者のクヌット・アイナー・ラールセンは、ノールウェイのオスロ生まれ。ノールウェイ工科大学の教授で、専攻は建築史と保存修復。国際交流基金の研究員として、1989年から日本に滞在し、東京国立文化財研究所と神戸芸術工科大学で日本の建築史と保存修復手法を学んだ。本書執筆時点(1994年)では、ノールウェイ・イコモスの委員長でもあった。なぜ、ノールウェイの研究者が日本建築の概説書を書いたのか、というと、イコモス木造委員会の拠点が北欧にあるからだ。北欧と言えばログハウスだが、日本の研究者・修理技師の立場からみれば、ログハウス屋さんに日本の木造建築(とくに社寺建築)の凄さが分かるはずはないという自負もあるかもしれない。しかし、ラールセンは伊藤延夫博士のもとで日本建築とその修復手法を非常によく吸収している。日本建築のよき理解者であることを日本人は知るべきである。しかも、この著作はベニス憲章の視点から、日本の修復のあり方を検討している。わたしにしてみれば、結章において、もっとはっきり日本の修理現場が抱える問題点、すなわち「復原」の弊害を指摘してほしいと思うのだが、ラールセンはのらりくらりと結論をはぐらかす。ものごとをまるくおさめようとする筆致は、まるで日本人のようだ。そのあたりにいらつくわたしが日本的でないということか。




 以下が授業計画。第8章は省略している。

第1講義: オリエンテーション 
第2講義: 著者紹介 目次と前言
第3講義: 第1章「建築の保存修復:国際的展望」
第4講義: 第2章「文化的伝統と価値(1)」
第5講義: 第2章「文化的伝統と価値(2)」
第6講義: 第3章「文化財:行政と法規」
第7講義: 第4章「修復の教育と研修」
第8講義: 第5章「材料と構造の劣化」
第9講義: 第6章「保存修復の材料と技術(1)」
第10講義: 第6章「保存修復の材料と技術(2)」
第11講義: 第6章「保存修復の材料と技術(3)」
第12講義: 第7章「復原:意匠のオーセンティシティ(1)」
第13講義: 第7章「復原:意匠のオーセンティシティ(2)」
第14講義: 第9章「日本の保存修復:その特異性と普遍性」
  1. 2006/09/26(火) 19:16:04|
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