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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

屋根の側窓 -田和山から

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 田和山の大型竪穴住居の施工は順調に進んでいるようだ。昨日までに、越屋根まで建築が進み、垂木も一部かけ始めたとのこと。側窓について質問が届いている。仮組検査におけるわたしの指摘にしたがって、少し小さくした。間口70cm、高さ70cm。茅を葺くと、開口部の高さは30cmほどになる。一昨年に復元した土屋根住居の側窓では開口部の高さは15cmほどであったから、まず妥当な寸法ではないだろうか。これでよいと思う。こういう窓の庇屋根は勾配が緩くなる。現状で12~13°だというが、これほど緩いと茅の上に杉皮を被せなければならないかもしれない。また、窓は下から2段目の母屋の上に築いている。内部からは背伸びしないと窓に手が届かない。
 さて、こういう側窓が縄文~弥生の竪穴にあったのかどうか。じつは、あったという保証はまったくない。弥生の土器絵画にもまったく描かれていない。しかし、わたしは大抵の復元住居に側窓をつける。これはメインテナンス上の意義が大きい。側窓を一つつけるだけで、竪穴住居内部の通風と採光は一変する。通気性がよくなって湿気が抜け、内部が明るくなるのである。また、場合によっては、火災時の抜け道ともなるかもしれない。竪穴住居で火災が発生して、入口側が炎で覆われても側窓によじ登れば外に逃げられる。いわば二方向避難の手段になりうる開口部なのである。

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 これとおなじ問題を、いま加藤家の屋根設計でも抱えている。加藤家はすでに登録文化財だから、外観の大幅は変更はみとめられないが、わたしは背面の屋根に二つの小さな側窓(天窓というべきか)を設けようと考えている。一つはロフトの上、もう一つは土間の上である。目的は竪穴住居と変わらない。さすがに二方向避難の手段にはならないだろうが、屋根の側窓に採光と通風を期待している。ほんとうは屋根に背面にソーラーパネルをくっつけて、屋内の電気をすべて自然エネルギーでまかないたかったのだが、パネル1枚設置するのに300万円もかかるというので諦めた。しかし、自然エネルギーは極力屋内にとりこみたい。風と光である。
 加藤家には地域産材に包まれたロフトができあがるが、屋根に側窓がないと、昼でも灯りをつけないと生活できないし、換気も悪くなる。土間も同じだ。薄暗い土間に光を採りこみ、換気の効率をあげるには、どうしても背面の屋根に側窓が必要だとわたしは思う。土間におくカマドの炊煙や蒸気を、この側窓が外へ運んでくれるはずだ。
 登録文化財には、もちろん、こういう生活のための「現状変更」を許容する柔軟性がある。文化財的価値をまもるだけでなく、住み心地のよい住居としての再生をもめざすのは当然のことであろう。

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  1. 2006/10/31(火) 21:28:22|
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