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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

患者感激!(Ⅲ)

 今日の病室は賑やかだった。患者の母に加え、滋賀在住の実姉が一家をあげてお見舞いにきてくださったからだ。姉夫婦は滋賀で老人ホームを経営している。だから、介護関係の情報をたくさんもっている。患者が退院後に必要な機器についても詳しいし、これから「身障者」として生きていく患者がなすべき行政手続きについても、分厚い資料をもってきて解説してくださった。
 患者は、なんどか同じことをつぶやいた。同じことを、自ら不思議そうに、くりかえし語るのである。
  「あのね、こんな体になってしまったんだけど、いちども悲しいという気持ちが湧いてこないの。涙も出ない。どうしてなんだろう、って不思議に思うの。ひょっとしたら、薬のなかに感情を抑える何かが入っているんじゃないかって勘ぐりたくなるぐらい、精神的に安定しているのね・・・」
  「きっと良くなるからだよ」とわたしは答えた。
 いまは1~7級の等級に照らせば、たぶん2級ぐらいの「身障者」にあたる状態なんだろうけれど、きっと、しばらくしたら良くなるにちがいない。ガンマナイフで治療した脳動静脈奇形さえ消えてしまえば、完治ではないにせよ、発病前に近いぐらいの状態に戻れるっていう自信が無意識にあるんじゃないだろうか。
 一方、配偶者たるわたしはこれまでどうだったのか、というと、正直なところ、発症後2~3日は湿っぽかった。人前で涙をみせる女たちを羨ましいとさえ思っていた。しかし、患者から酸素マスクや尿管が外され、たどたどしいけれども、ひょうきんな会話をするようになり、いちどは転倒したものの、杖の歩行もできはじめた今となっては、精神的にまったく安定している。ともかく、できるだけ集中治療室にいてやりたい。そういう気持ちがとてもつよい。じつは、明日、タクオが京都にやって来るのだけれども、京都まで出かける時間があれば看病していたいと思うので、タクオにはそう連絡した。申し訳ない。
 不思議なことに、看病が苦にならない。患者の側にいることが患者の闘病生活の補助になるからだけではなく、患者の側にいると自分がとても楽しく、幸福感で満たされるからだろうと思う。一日、何時間でも病室に居られる。もっとも、昨日は結構疲労がたまっていたので、空いているベッドに横になってよく眠った。昼下がりもそうだったが、夕食後には熟睡してしまい、患者の声でおこされた。消灯時間をすぎて、午後九時をまわっていた。病室を去ったのは、十時になってからだった。
 よく眠ったから、原稿はさっぱり進まなかった。今日こそ、書き始めるぞ!

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  1. 2006/11/23(木) 23:56:20|
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