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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

ナマズを囲む

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 田和山から妻木晩田に移動した。2月4日の午後2時、わたしは妻木晩田の体験学習室に入室した。ほったらかしにしていた指導を再開する決心を、ついに固めたのである。そこでピエールと再会した。タクオ、宮本、ホカノ、ピエールの4人がそろい、ピエールは業者側としてもちろん協議に参加するが、ホカノも残ることになった。タクオと宮本は美保神社をめざした。
 事態は深刻だった。ピエールは復元建物に苦しんでいた。わたしはピエールをもっと早い段階から指導しなければならなかった。やはり基本の理解が不十分だ。ちょっとしたコツを教えれば、いくつもの矛盾を解消できるのだが、初心者にはそのコツがわからない。昨年、利蔵を一年がかりで育てあげた。焼失竪穴住居跡の復元手法をたたき込むのに一年を要したのである。その利蔵はディーラーに就職した。じつは、昨年の3月、県教委に対して、利蔵を嘱託のような立場で雇えないか、打診した経緯がある。もしも利蔵が妻木晩田事務所にいたならば、県教委はこれほど復元建物に苦しむことはなかったであろう。あのころピエールは池田家墓所の玉垣構造補強の研究に没頭していた。それはみごとな研究であった。しかし、ピエールには竪穴住居復元のイロハを教えていない。
 竪穴住居の復元は難しい。わたしのやっていることがだれにでも出来ると思ったら大間違い。竪穴住居復元には訓練と経験が必要だ。あと2ヶ月でピエールが5棟の模型と設計図を完成させることができるのかどうか、心配でならない。

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 それでも復元建物はまだましだった。覆屋と中央ガイダンスの設計案は救いがたい(ピエールの担当ではない)。「建築以前」のレベルだと言ったら言い過ぎかもしれないが、「県の青少年建築コンペで設計案を競いあわせるほうがまだましだよ・・・」ともコメントした。冗談ではなく、本気でそう思った。わたしは、昨年の検討会で、史跡範囲上に建てる現代建築の設計方針として、
   ・エコロジー/ランドスケープ/地域産材
という3つのキーワードを設定することを提唱した。事務所側は、この3つの目標をクリアするよう業者に要求しているらしい。しかし、事務所に届いた設計図は、その思想からあまりにもかけ離れている。史跡上に建築を建てることの恐ろしさが微塵もわかっていない。
 妻木晩田はなぜこれほどまで苦境に追い込まれたのか。いったい何が悪いのか。他人を悪者にせず、冷静に考えるしかない。関係者全体で乗り越えていかなければならない。

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 夜は「庄屋」で「ナマズを囲む会」。「吉田を囲む会」のはずだったが、主役の吉田は「用事がある」とのことで遅刻してやってきた。吉田があらわれた時には、すでに「ナマズの活きづくり」はテーブルから消えていた。参加者は結局、吉田のほか、ピエール、宮本、ホカノ、タクオとわたし。さらに県教委から2名が加わった。計8名。賑やかな会になった。
 1・2期生は、みんな職場のことで悩んでいる。そりゃ学生と社会人とのギャップは途方もなく大きい。最初の1~2年は苦しむだろう。給料も安いだろう。ところが、そんななかで、お菓子屋さんに就職した吉田の月給が最も高く、ボーナスもちゃんとあり、おまけに彼女まで出来ていることが判明して、一同驚愕! 大学の3~4年次を思い起こすと、どうひっくり返っても、同級生の宮本やピエールに及ばなかった男が今はいちばん余裕の表情をしている。どうやら「用事」というのも「彼女としっぽり」だったみたい!?
 ともかく吉田の表情は明るかった。こちらに突っ込みまでいれてきた。
  「あの、茶室のパンフレットはどうなったんですか?」
  「(しばし息を詰まらせ)・・・あのな、もう茶室どころじゃないんだわ・・・加藤家の修復プロジェクトで大変なんだから・・・」
とは弁解したが、じつはわたし自身、あのパンフのことが気になっている。コルビジェの『小さな家』のようなしゃれた本にする予定で原稿を書き進めブログに連載していたのだが、途中で頓挫したまま。なんとも情けない。
 吉田に宿題を突きつけられた夜であった。

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  1. 2007/02/06(火) 00:20:49|
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