年度末に入稿しながら、じつに7回も校正をくりかえし、悪戦苦闘の連続だった『河本家住宅 -建造物調査報告書-』が、本日ようやく研究室に納品された。わずか100ページの報告書だが、研究室所属の1・2期生が総力を結集して、調査・分析・作図・編集にあたり、調査から刊行までまるまる1年を費やした。
琴浦町の河本家住宅は、昭和47年度の緊急民家調査で発見された古民家で、昭和49年3月29日にオモヤとキャクマが県の保護文化財に指定された。その後、昭和53年の屋根替えの際、オモヤの屋根裏から貞享五年(1688)の棟札が発見されている。一般的傾向として、因幡の民家は年代が古いけれども素朴、伯耆の民家は年代がやや新しいが風雅、という対照性を看取できるのだが、河本家の場合、年代は17世紀に遡り、キャクマやハナレの座敷飾り・書院・欄間などの意匠も傑出したものである。また、今回の調査によって、オモヤ棟札以外に、11枚の棟札・祈祷札が発見され、キャクマ、ハナレ、土蔵等、大半の建造物の年代があきらかになった。歴史的学術性と芸術性を総合的に判断するならば、河本家の右に出る民家は県内にない、とわたしは思っている。
先般、山陰中央新報にとりあげられた鳥取市倭文の旧加藤家住宅の場合、「県市指定レベル」の建造物と評価できるのに対して、県保護文化財の河本家住宅の主要建造物はあきらかに国指定重要文化財の価値を有している。未調査ながら、庭園の文化財価値も相当高く、屋敷の建造物・庭園全体の保全計画を早急に策定すべきであろう。
わたしたちの報告書では、保存活用計画の叩き台もちゃんと示していて、その目玉は「B&B構想」なのだが、これについては、また別に報告させていただこうと思っている。
- 2005/07/29(金) 23:35:36|
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