2週間前に
ギターを買ったついでにスコアも買っておいた。関口祐二というギタリストが編曲しているスコア集で、本人が演奏しているCDもついている。
巻末の「編曲者紹介」によると、関口さんは「小学生の頃から、独学でギターを始め、後に宮之上貴昭氏に師事。アコースティック・ソロ・ギターパフォーマンス、自己のジャズ・ギター・トリオなどの演奏をしている。(略)モリダイラ楽器フィンガー・ピッキング・コンテスト2003において、最優秀賞及びオリジナル・アレンジ賞受賞」とあり、どんな演奏をするのか気になったから、アマゾンで検索したところ、たしかに1枚のCDを発見したのだが、値段が高いので買うのをあきらめた。
小学生のころからギターを始めた点はわたしも同じで、小六~中学時代は
フォークルや高田渡などの元祖日本フォーク系、高校時代は
ニール・ヤングやジェームズ・テイラーなどの西海岸シンガーソングライター系をもっぱらコピーしていた。大学になってジャズを聴き始めたのだが、和声もスケール(音階)もわけがわからなくて、ともかくスコアを買ってみようと決意し、渡辺香津美の採譜によるスコア集を買ったのだが、これがどえらく難しい。
かつてある音楽評論家が、ジョン・コルトレーンに対して「この譜面をテナーで吹いてみてください」と頼んだところ、コルトレーンは「わたしには吹けません」と答えた。ところが、その評論家は、「これはあなたの演奏したアドリブを採譜したものなんすよ」とコルトレーンに伝えた逸話は、とても有名だ。こういうふうに、天性のジャズメンは譜面など読めない。和声と音階の理論的基礎がしっかりしていれば、コード進行さえ決めておくだけで、あとは自分のごつい技をみせるだけ・・・
というわけで、本人でさえプレイできない譜面を、わたしたち素人が弾くのはキチガイじみた行為なのである。それでも、ジム・ホールの「酒とバラの日々」とか、ウェス・モンゴメリーの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」などをなんとか弾けるようになった。しかし、コード進行やアドリブの本質はさっぱりわからないままだった。

それから20年ほどたって、ウクレレ・ブームが到来した。きっかけは高木ブーではない。ハーブ・オータという日系2世のウクレレ演奏家が、朝鮮戦争時代、米軍の通訳として長く横浜に滞在していた。1950年代に開かれたお別れパーティの演奏を知人の一人が録音していて、それが90年代にCD化され、日本の音楽シーンを震撼させたのであった。オータさんは、ウクレレ1本でハワイアンはもちろん、ジャズもフラメンコもバッハもショパンもストラビンスキーもなんでも演奏してしまう。ジェイク島袋が活躍する現在のことではない。1950年代の録音である。あのCDには仰天して、以来、オータさんのCDを買いあさった。そして、ウクレレも計4台買った(↑は1台め。いちばん愛用しているのはネックの長い「高木ブー」モデルだが、これではない)。オータさんの演奏をビデオに納めた教則本も3本ばかり買ったし、大阪公演はワイフと一緒に聴きにいった(↓近鉄小劇場、99年7月19日)。
ウクレレという楽器には、ともかく驚かされた。4本の弦だけで、ジャズっぽい不協和音を表現するのは大変なはずだが、それは決して不可能ではない。コードを展開させていくプロセスでの開放弦の使い方も絶妙。こういうウクレレの奏法からギターの演奏を考え直したギタリストも少なくなかったことだろう。ギターの弦は6本あるけれども、すべての弦を使う必要はまったくない、という、じつに単純な事実にわたしもようやく気がついた。
また、ちょうど同じころ、NHK教育TVの「趣味悠々」という番組で、山下洋輔が「ジャズの掟」という素人向けの講座をやっていて、それを毎週みていたら、和声とスケールの関係がうっすらと理解できるような気がしてきて、自分のアドリブが、少しだけジャジーな匂いを漂わせはじめた(気がした)・・・

で、最近は気分転換を兼ねて、少しずつ関口編曲本を練習している。とりあえず1曲めの「アローン・アゲイン」から。ご存知、ギルバート・オサリバンの名曲である。綺麗な曲はコードを弾いているだけで気持ちいい。クリシェを多用した滑らかなコード進行に驚かされる。
Amaj7→A6→C#m7→Em→C#m7(onG)→F#7→Bm7→Bm7-5→
A→Aaug→A6→G#7→C#m7→Em→F#7→Bm7→Bm7-5→Amaj7
→A6→C#m7→F#7(-13add9)→Aadd9
が一般部。ここからのサビもすごい展開。キーはAの曲だが、いきなりCに転調する。
Cmai7→G→Bm7-5→E7-9→Am7→F#m7-5→Emaj7→Bm7→E7
となって、元のAキーに戻るわけだ。「アローン・アゲイン」は、アドリブのリード部分をのぞいて、だいたい弾けるようになった。結構、時間がかかった。で、レベルはどうなのか、というと、決して「初級」ということはない。おそらく「中級」の初歩レベルではないだろうか。
それで、昨日から次の練習曲を探して弾き始めた。選んだのは「ウィア・オール・アローン」。ボズ・スキャッグスの大ヒット曲である。ボズ・スキャッグスのバラードというのは、わたしたちが若い頃の「こましの曲」であった。
「宍道湖畔の夕暮れの道をドライブするんだよ、ボズ・スキャッグスのバラードを流して夕焼けを眺めていたらさ、まぁ、軽く落とせるから・・・」
なんて偉そうなことを後輩に語っている時代が、たしかにありましたね・・・こちらもコード進行はやはり素晴らしいが、もうくどいから転載は控えよう。
ところで、たまたま選んだ二つの曲のタイトルには、いずれもアローン(alone)という言葉が使われている。aloneは「ひとりぼっち」を意味する形容詞だが、lonelyやlonesomeなどの類語と異なるのは、必ずしも「寂しいことを含意しない」ところだという。
「また、ひとりぼっち」。そして、「みんな、ひとりぼっち」。
スコアの収録曲は以下のとおり。
1.アローン・アゲイン
2.アメイジング・グレイス
3.ニューヨーク・シティ・セレナーデ
4.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
5.素直になれなくて
6.オネスティ
7.ムーンライト・セレナーデ
8.虹の彼方へ
9.サンタが街へやってくる
10.テイク・ファイヴ
11.A列車で行こう
12.遙かなる影
13.ウィア・オール・アローン
14.星に願いを
15.ホワイト・クリスマス
16.スターダスト
17.卒業写真
18.いとしのエリー
19.オリビアを聴きながら
20.君といつまでも
21.世界に一つだけの花
22.見上げてごらん夜の星を
- 2007/02/11(日) 19:12:56|
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