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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

庭のまわりで

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 佐治に帰ることになった家内の両親を見送るため庭にでると、薄紅色のボケが満開。母は写真に撮りたい、と言うのだが、持参のカメラがすぐにとりだせないので、わたしが代わりにパワーショットで撮影した。IXYの兄貴分として発売されたごついデジカメである。
 どこからか、鶯のさえずりも聞こえてくる。
 小春日和というよりも、春そのものですね。

 うちの庭にはふたつの守り神がいらっしゃる。ひとつは済州島からお連れしたトルハルバン。もうひとつは沖縄からもって帰ったシーサだ。シーサは狛犬だから一対になっているのだが、我が家の場合、一体は玄関ポーチの屋根の上、もう一体はポーチの下の門前に置いている。トルハルバンはボケの近くの築山の上でにこにこ顔。ふだんに増して、今日はごきげんにみえる。

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 ただ、わたし自身の体調が芳しくない。忙しすぎる日程をこなして、奈良まで帰ってきたが、また血圧があがっていて、よくないと思いながら、今日もアダラートを飲んでしまった。というわけで、体が重いから、なかなか自宅を出る気にならなかった。病院に着くと、家内は3階のラウンジで一人テレビをみていた。
  「あれっ、おばあちゃんたちは帰ったの?」
  「うん、2時間ぐらい前に帰ったよ・・・」
 どうやら、彼女はわたしを待ちくたびれたみたいだ。少し、彼女の症状を試してみた。
  「君の長女の名前は?」
  「クミコ」
  「正解。ヨーコって言わなくなったね。では、君の息子の名前は?」
  「・・・シュンペイ」
  「正解。では、・・・」
  「あのね、あなたのお母さんの名前がなかなか出てこないの。」
  「おじいちゃん(わたしの父)は?」
  「コータロー、じゃなくて、・・・イチタロウさん」
  「そうそう、じゃ、イチタロウさんの奥さん(おばぁちゃん)は?」
  「・・・、・・・・、・・・」
  「タミコさんだよ」
  「そうそうタミコさん、この名前が出てこないの」
  「では、ぼくの兄キの名前は?」
  「・・・」
  「キヨシさんだよ、キヨシさんの奥さんは?」
  「・・・」
  「ルリさんだよ、じゃあ、もういちど聞くけど、わたしの母の名は?」
  「・・・、・・・・、・・・」
 2分ほど前に教えたわたしの母の名前がでてこない。2度めの出血をみる前は、こんなにひどくはなかった。とりあえず、夫の名前は覚えていてくれているから、まぁいいか。

 今日は、ある旧友と電話で話をした。かれは高校時代の同級生で、同じ大学の医学部を卒業し、いまは解剖学の大家になっている。かれに妻の病状を打ち明けたら、非常に驚いて、大至急情報を集めてくれることになった。もちろん病院で携帯電話は使えないから、駐車場に停めている車の中で長時間話をした。そのあとコンビニまで週刊誌を買いにいった。

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 病室に戻って、患者と一緒にその週刊誌を読んでいた。じつは、一旦元締めに返した厚さ4.3㎝の学術書が戻ってきていて、この本のレビューを書かなければならなくなってしまったのだが、とても読み直す気にならない。いまの体調では、とても無理だ。週刊誌か漫画が限界です。司馬遼太郎にこの分厚い本のデータを与えたら、どんなにわかりやすく書いてくれるだろうか、なんて思いながら、まだ箱から本を取り出してもいない。くりかえすけれども、ノー・ギャラで、くどいようだが、本はレビューの仕事が終わったら元締めに返さなきゃならない。で、勉強になるかと、言えば、ならないことはないけれども、なにより本を読んで感動できないのが残念なことだ。
 だれしも、読んで良かったと思う本や、聞いてよかったと思う音楽や、訪れてよかったと思う場所に出会うことがまれにあるだろう。そういう本や音楽や場所は自分の気持ちを清浄にしてくれるから不思議だ。他人との競争心をあおるのではなく、日常の自分を振り出しにもどして、「いったい自分は何なんだ」と考え直す契機を与えてくれる。
 学術書がそういう感動を与えてくれることは滅多にない。

 夜の9時前になって、次女と息子が病院にやってきた。みんな母親が好きなので、なかなか帰ろうとしない。看護師さんが病室に入ってきて消灯時間を告げた。母親のほうから「早く帰りなさい」とたしなめられ、子どもたちはしぶしぶ病室をあとにした。

 帰宅して、「豚肉と水菜のハリハリ鍋」を作った。昨日、河原町の「道の駅」で仕入れてきた水菜は一束100円。抜群に新鮮で、豚肉との相性は最高だ。
   「早く、お母さんと鍋を囲みたいね・・・」
   「うん」
   「でも、今回は外出・外泊許可はなかなか出ないよ」
   「どうして?」
   「だって、短期間で連続出血しただろ。病院も警戒してるよ。」
   「・・・・」
   「お母さん、可愛いね」
   「うん、可愛い」
   「うん」
 すると、娘の膝でまどろんでいたデブまでがテーブルに頭をのりだし、こっくり頷いた。


  1. 2007/03/04(日) 23:55:49|
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