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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

洞ノ原炎上

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 ごらんのとおり。2001年度、妻木晩田遺跡にはじめて復元した大型竪穴住居(洞ノ原地区8号住居跡)は無残な姿になり果てた。出火は3月7日の午後3時ころ。火災の原因は燻蒸の火が越屋根に着火し、それが屋根にひろがっていったのだという。
 あたりまえのように聞こえるでしょう? ところが違うんです。 

   「土屋根は燃えない」

 これが常識なんです。燻蒸の火の粉ぐらいで土屋根が燃えるはずはない。では、なぜこの屋根は燃え崩れてしまったのか?
 それは、桁から上の土を屋根から剥いで、下地の茅葺き面を露出させてしまったからなのです。じつはこの住居、築後2年にして垂木に腐朽が目立つようになり、いちど修復している。その際、下地の茅葺き面の上から農業用のポリフィルムをぐるぐる巻きにして土を被せた。きわめて簡易ながら、いちおう防水処理を施したのである。ここまでわたしは修復過程をよく知っている。ところが昨年8月3日、ある変化に気がついた。その日のブログを引用してみよう(一部要約)。

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 復元建物のレベルにおいて、田和山は妻木晩田に大きく水をあけつつあるのだが、一方の妻木晩田といえば、送付されてきた第7回弥生文化シンポジウムのチラシをみて、また驚いた。わたしたちが懸命に作った復元住居を、勝手に修復し、土屋根の土部分をどんどん狭めていっているのである。ようするに土は周堤の近辺にしか残らないようにしているのだが、じつはこの部分にいちばん水が溜まることにかれらは気づいていない。しかも、おそらく土屋根部分の下地に十分な防水処理をしていないから、またおなじ修復を繰り返すことになるだろう。
 こういう修復を、設計指導をしてきた研究者に断りもなく、独断でおこなっているのはなぜだろうか。自分たちで完璧な修復ができると思っているからだろうか。こういう修復を勝手にやって
  「土屋根住居は困ったものだ」
という偏見を抱いているからこそ、遺跡上に建てるガイダンス施設や覆屋までコンクリートで作りたくなるわけだ。
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 わかりますか、みなさん。桁から上の部分の土を剥ぐ第2次修復をわたしに断りもなくおこなった結果、こういう火災を招いているのですよ。桁から上の部分に土は載っていない。ただの草屋根です。この部分に着火したら、もうお終い。伝えきく情報によると、下側の土で覆われた部分は鎮火しにくいので、ユンボを入れて土を除去し消火したとのこと。研究者としては、なにもしないでもらいたかった。焼けるがままにしておいてくれれば、御所野遺跡の焼却実験に次ぐ貴重なデータが得られたのだが、まぁ、それを消防署が許すはずはない。

 火災から一夜あけて、わたしは北浜のコンサルに出向いた。そこでは、妻木晩田遺跡事務所のメンバー二人が待っていた。
  「あれっ、二人もこっちに来てるの? そんな場合じゃないだろ?」
  「いえ、こちらの基本設計も重要ですから・・・」
 ピエールは妻木山Ⅰ区SI-23、Ⅲ区SI-125、同SI-126、Ⅳ区SI-153の4棟の竪穴住居模型(1/20)を完成させていた。なかなかよく出来ている。微細な修正を施せば、基本設計の成果物として納品することが十分可能なところまで辿り着いた。問題は、作図を手書きでやっていることだ。なぜMicro-GDSやVector Worksを使わないのか、不思議に思ったので上司に尋ねたところ、会社で使っているのはJW-CADだとのこと。いまどきJWだとか手書きだとか、冗談じゃありませんね。ピエールは堂々とMicro-GDSを使って図面を描き、それをデータ変換すればいい。研究室では、いつでもそうやってきたではないか。
 これで復元建物の基本設計指導はなんとか片づけた。しかし、覆屋と中央ガイダンス施設はさっぱり駄目みたいだ。業者側は設計案を替えようとしない。替えなければどうなるのか。その案は消滅してしまうだけなんだ。たぶん、それでも良いのだろう。実現させる意欲もなく絵を描いて納品すれば仕事をこなしたことになる。しかし、そういう業者は二度と使われない。

20070309011834.jpg
↑妻木山Ⅲ区SI-125(8本主柱)


  1. 2007/03/08(木) 23:17:53|
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