2年連続で
「科研が書けん」とこぼしていた科学研究費の採択内定通知が届いた。研究種目・題目等は以下のとおり。
研究種目: 科学研究費補助金(萌芽研究)
研究題目: 文化的景観としての水上集落論
-世界自然遺産ハロン湾の地理情報と居住動態の分析
採択年度: 平成19~21年度
補助金額: 330万円
研究概要: ベトナムのハロン湾は、1994年に世界自然遺産に登録され、2000年には第2次申請が認められて、その範囲を拡大した。現在、さらに審美(芸術)的価値と歴史・文化的価値をこれに加えることによって、「世界複合遺産」への登録をめざしている。この問題は「文化的景観」としてのハロン湾の価値と直結している。ハロン湾は地形と海面が織り成す自然景観もさることながら、そこで生活する水上居住民たちの集住形態が、ハロン湾の景観の質を大きく向上させている。漁民の水上集落がない海域とある海域で、景観は大きく印象を変える。これはまさしく「自然景観」と「文化的景観」との差異を示すものである。本研究は「自然景観」ではなく、「文化的景観」としてのハロン湾の価値を分析・評価するために、ハロン湾の水上集落に関する地理情報および視覚情報を集成・分析するとともに、水上居民が関わる「文化的景観」に内包された生活・生業上の問題点を「居住動態」という視点から洗い出し、景観保全の方途を模索しようとするものである。
いうまでもなく、この研究は
昨年9月におこなったハロン湾 Hang Tien Ong 村での調査を継承・発展させるべく考案したものである。昨年度の実績が奏効し、こうしてなんとか採択にはこぎつけたが、申請額の497万円からは大きく減額されており、昨年の加藤家プロジェクトと同様、資金繰りに骨を折ることになりそうだ。とりわけ今回は
DGPSとハンディ光波測距儀を連動させた新しい測量技法を採用するため、備品費だけで今年度予算(200万円)の半額以上を占める。何人で調査に行くのかは決めていないが、できれば再び学生諸君にも参加してもらいたいので、調査旅費の工面が当面の課題となる。
ところで、科研費については、すでに報道されているとおり、地方の国公立・私立大学で採択率が大きく下がっており、大学運営に波紋を投げかけている。文科省は中央の拠点機関に研究費を集中させる姿勢を崩しておらず、本学のような地方の弱小私学は、これからも科研費の獲得に苦労させられそうだ。実感として言えば、前の職場にいたころの3倍ぐらいのエネルギーをもって申請書を書かないと通らないのではないか。おそらく拠点的な研究機関にあっては、あらかじめ研究費の配当額が決まっていて、その内部でいかに予算を配分するかだけが問題となるのに対して、「その他大勢の研究機関」については、一定の配分額が前提づけられているようには思えない。すなわち、研究者個人が平等の立場になく、所属機関の格付け(あるいは機関の研究遂行能力)が申請者の評価に上乗せされているのではないか。ここ2年の新規採択状況をみる限り、以上は邪推ともいえないように思うのだが、近隣研究者の感想もぜひ聞いてみたいものだ。
- 2007/04/23(月) 23:30:17|
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