
加藤家住宅で
学生人材バンク主催の「古民家の匠」の会が開催された。加藤家住宅にとっては、初物尽くしの一日であったと言える。2006年度の修復完了後はじめてのイベントであり、わたしの講演は完成したロフトをはじめて活用する機会になった。さらに宴会については、1階イロリ間の板敷きフロアーを覆っていたブルーシートを外して、はじめて板間を活用した。これまで養生していた二つの新しい板間-ロフトとイロリ間がはじめて対外的に開放され、活用されたという点で後世まで語り継がれる記念日になるかもしれない(ちと大袈裟ですな?)。

昼に家を出て、蕎麦切り「たかや」でもりの大盛りを一枚たいらげ、たっぷりそば湯を啜ってから加藤家に移動。すでにゼミのメンバーや学生人材バンクのスタッフが準備を進めていた。今日はもっているギターをすべて車に積み込んでおいた。フォーク・ギターの6弦に不安を抱えていたからである。暇な時間を利用して、エレガットとセミアコも調音し、少し弾いてみた。
まもなく学生が続々と集まり始めた。結局、鳥大と環境大をあわせて30名ばかり。ロフトにはちょうど良い人数だ。鎖骨骨折をしたゴルゴさんも自力でロフトにあがってきた。びっくりしたのは、大城(かつての「居住者O君」)が鳥取に残していったガールフレンドのKさんがあらわれたこと。大城に電話をかけて話をしているので、ちょっとだけ代わってもらった。大城はとても忙しそうで、ブログを読む暇もないらしく、今日イベントがおこなわれることも知らないでいた。しかし、元気そうな声が聞けてほっとした。今日こうして加藤家でイベントを開くことができるのも、大城らの獅子奮迅の活躍があったればこそである。

講演は午後4時スタート。講演のタイトルは、
・学生によるセルフビルド&ゼロエミッション
-「廃材でつくる茶室」から「加藤家修復プロジェクト」まで-
聴講してくれた学生諸君には、まことに申し訳ないことだけれども、この講演のために新しいパワーポイントをつくる余裕はなかった。昨年の
アイスブレイク講演のデータに倉吉「
出前公聴会」のデータをくっつけて修正したパワーポイントである。著作権の関係上、制作者を示しておくと、岡村(1期生)・大城(3期生)・安田(同)の卒業研究用パワーポイントを活用させていただいた。3名には心から感謝したい。
ところで、わたしは「講義」が苦手。一般市民向けの「講演」のほうがずいぶん気楽だ。今日は「講演」であって「講義」ではない。とはいうものの、聴講者は全員学生なんだから、どうしても「講義」っぽくなってしまうだろう。しかし、「講義」ではなく、あくまで「講演」として学生諸君に語りかけようと努力したつもりなんだが、うまくいったのかどうかは分からない。講演は1時間足らず。時間が余ったので質問をたくさん頂戴した。講演のあとにたくさんご質問いただくのは、講演者として大変嬉しいことだ。日本人の場合、-とくに考古学の研究集会で多いのだが-講演時はおとなしくしておいて、懇親会(つまり酒の席)になったら荒れに荒れて不躾な質問をする者が少なくない。その点、今日の講演会は爽やかだった。

5時半にはロフトから下り、1階で宴会がスタート。ゴルゴさんが元気に船岡の民家「風輪」での生活を映像で紹介した。「風輪」は70年ほど前に建てられた瓦葺きの古民家で、学術用語を使うなら、むしろ「近代和風住宅」と呼ぶべき建築であろう。加藤家と同様、イロリをセルフビルドしているが、炉端の四方にテーブルをめぐらすなど自由な発想で新しいイロリを作っている。こういうイロリの作り方も楽しいだろう。加藤家でも、新しいタイプの創作イロリを作っても良かったのだが、なにぶん18世紀前半に建立された「登録文化財」建造物で、おまけに屋根裏で江戸時代の自在鉤が発見されたものだから、どうしても旧状に復したいという欲求を抑えられなかった。職業病だね。
宴会は愉快に進んだ。うちのゼミの学生はほとんどみんな人見知りで、あまり外部の学生諸君と交流しようとしないのが少し気になったが、院生が結構社交上手なので驚いた。

さて、問題はコーラスだが、いきなりというわけにはいかないので、まずはクロマッチク・ハーモニカのタッチ(S君)とのデュエットから始めた。タッチの得意な曲は「アメイジング・グレイス」と「星に願いを」。今日もってきた
スコア集には、二曲ともちゃんと入っている。「アメイジング・グレイス」は初見でも弾けるレベルなんだが、「星に願いを」はアレンジが複雑で、高音域で単音ごとにコードが変化するから、相当練習しないと譜面についていけない。というわけで、伴奏したのは「アメイジング・グレイス」のみ。はじめての共演の割には、うまくいったんじゃないかな。ただ、ワルツのスピードがずれていたので、もう一度演奏した。少し良くなったね。
タッチくん、「星に願いを」はぼちぼち練習しておくので、またやりましょうね。

いよいよ、コーラスの時間になった。曲目は高田渡の名曲「
生活の柄」。ブログを振り返ってみればよくわかるが、ほんとによく練習した。サビのコーラス部分(3声)なら、軽く300回は歌っただろう。とはいえ、リハーサルなしはきついので、いちどコーラスの練習をさせてもらった。拍手が多かった。そして、本番。そこで手拍子がついたので・・・ストップ。
「あのね、そういう曲じゃないの・・・放浪者の歌だから・・・しんみりとね・・・」
というわけで、もういちど初めから。1番のソロはわたし、サビは全員、2番のソロは女子、再びサビは全員でコーラス、3番のソロはわたしに戻って、サビのコーラスを2回リフレインし、お終い。まぁまぁの出来だったんじゃないだろうか。
そして、
ザ・ラバールのリーダー岡野泰之がリードボーカルをとる「銭がなけりゃ」に。これは完全にすべりました。やるんじゃなかったね。


演奏が終わり、中締めとなった。そこで、鳥大の一人の女子学生がわたしのところに駆け寄ってきた。「アメイジング・グレイス」を歌いたいので伴奏してほしい、という。とても嬉しかった。彼女は英語と日本語の2バージョンを歌った。今度はハーモニカとギターと歌と3人でやりたいですね。
それからギター&ウクレレ好きの男子学生が集まってきた。エレガットを使って、ちょっぴりレッスンした。そして、学生たちに訊ねてみた。「アコギ・ソロ」のプロジェクト研究1~3(1・2年対象演習)をやりたいのだが、できるだろうか、と。すると、かれらは答える。
「右手はともかく、先生の左手にはついていけませんよ」
そんなこともないと思うのだけどね。なんとか、民家を会場とするソロ・ギターの会を開きたい、というのが最近のわたしの願望であります。

それからちょっとした騒動がおきた。いつのまにか見知らぬ人物(社会人)が紛れ込んでおり、炉端に居座って場の雰囲気を大きく乱していたので、会場から消えていただいたのである。加藤家という「場所」に似合わない方はここに入ってきてもらっては困る。それだけのことなんだ。
高田渡に「夕暮れ」という歌がある。
夕暮れの街で
ぼくはみる
自分の場所から
はみだしてしまった
多くの人々を・・・
- 2007/04/28(土) 23:21:45|
- 講演・研究会|
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